テレビドラマ全史書 題:テレビドラマ全史
副 題:1953~1994
著 者:東京ニュース通信社
出版社:東京ニュース通信社
発行年:1994/5/1
この書籍を書店で初めて見た時の衝撃を感じたのも、
もう二十年も昔になるのかと思い至る。
平積みで、そう、5冊程も積まれていたろうか。
 当時、既に北関東の地に来ており、その地方都市では
わりと大きい部類の書店で見かけたのだが、
その書店が無くなってからですら、十年程も経っているだろう。

当時、今ほどではないとしても既にテレビ関連資料を
漁っている身として、常に不満が溜まっていた。
どれもこれも、網羅性が低すぎる。
人気の番組、人気のジャンルは大きく扱うが、
そうでないものは、ほとんど扱われない作品が多かった。
この不満は結局、「俺がやるしかないか」(笑)と最終的に判断し、
本家ブログに至る訳だが、それは置いておこう。

そんなだから、アニメ・子供番組の情報は氾濫していた。
「もう、いいよ。アニメと特撮は。
 まだまったく触れられてない番組あんだろ」 
と、新しい資料本の類を目にする度に憤っていたのだが、
そんな折り、この本の表紙が目に飛び込んできたのである。
A4版、800頁近い上質紙の威容に、テレビドラマ「全史」と銘打たれていた。
まさか、と思いながら、期待半分、
でもいつも期待は裏切られていたから、覚悟半分で手に取った。

中を覗いた時の衝撃。
正に、自分が乞い焦がれていた類の本であった。
テレビ開闢の昭和28年から、その当時の平成6年に至るまでの、
なんと、ほぼ全てのドラマを網羅していたのである。
即座に購入を決断。
一万円くらいするだろうかと価格を確認したら、6千円であった。
もちろん既に社会人であったから、 躊躇わず購入した。
仮に一万円でも躊躇は無かったであろう。
(これで6千円なら納得できる)
そう心の中で何度も呟き、帰宅するまでの心中は弾んだ。

こんな本は二度と出ないだろうなと思ったが、
案の定、その後に関係者に図版の使用を咎められていた。
たしか、同じ出版社のTVガイド誌上だったかと思うが、
その件に関してのお詫びが掲載されており、
この出版社・この書籍にしてこれなのだから、
今後は絶対に、こうした書物が正規に発売される事は無いと悟った。
驚いた事に、平積みされていた全てが、数日で消えた。
こんなマニアックな6千円もする本を買う者が、
こんな田舎都市にそんなにいた事が驚きだった。
しかし、この本の希少性、資料性を鑑みれば、それも当然だろう。

インターネット上にテレビドラマデータベースというサイトが有るが、
あれなどはワタクシが覗いた当初、ほとんどこの本の転載で出来ていたと思う。
こんなの許されるの?というのが第一印象だったが、
漠然と、関係者なのだろうと納得していた。
後にテレビジョンドラマの元編集の方とたまたまメールをやり取りする事があって、
あまり肯定的でないご意見を、当時は伺った。
もっとも、今では その後のデータが独自で充実しているし、
あれもインターネットならではの身の起こし方と言えるだろう。
2ちゃんねるだって、あめぞうを乗っ取ったようなものだったし。

内容は先にも書いた通り、ほぼ全てのテレビドラマを紹介している。
レギュラー枠は当然として、驚く事に、単発ドラマも網羅している。
いかんせん数が多すぎるので、どうしても一つ一つの番組情報は薄くなる。
けれども、それまで数多あった資料本とは一線を画し、
ドラマ史上に残る作品も、名も無きドラマも、等価値で扱われている。
ただ、年度ごとのトピック枠が有って、そこで史上に残る作品が5作前後、
次に、もう少し落ちた扱いで6、70作ほどが小写真付きで別解説を施されている。
そこに漏れた作品は、五十字程度の簡単な解説が有るだけであるが、
それですら、ほぼ全作品となると、空前にして、おそらく絶後となろう。

得られる情報は、他に、放送局、放送開始日、放送時間、放送回数、
スタッフ&キャストといったところで、まあ最低限の情報は得られる。
但し、空欄も結構あるし、誤謬も幾つか有り、
関東キー局でなかった作品だと、扱い漏れがけっこう有る。
それでも、NHK放送作品なら年鑑で調べれば良いのだが、民放作品は
それまでまったく調べる術が無かったのだから、本当に有り難かったし、
生涯手放す事は無いだろうと確信したし、その思いは今も変わらない。
もはや商業ベースでこうした本を出版するのは不可能であろうから、
あとはワタクシのような酔狂な人間が、
同人誌のような形でなんとかするしか無いであろう。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:9
商業出版された本としては最強無敵。索引も有るのは良いが、振り仮名や読みが弱い。

面白さ:5
あくまでも網羅性が主なので、解説は弱い。

必携度:8
今ではインターネットも有って、訂正のできない書籍は少し弱くなった。

入手難度:6
  たまにオークションに出るし、その場合は当時定価以下で入手可能。