東京12チャンネルの挑戦
書 題:東京12チャンネルの挑戦
副 題:300チャンネル時代への視点
著 者:金子昭雄
出版社:三一書房
発行年:1998/7/15
テレビ番外地・東京12チャンネル。
関東地方で見ていた方々なら、あの独特の空気をご記憶のはず。
公開番組には一種言われぬ垢抜け無さが有り、もやがかっていた。
出てくる芸能人は、これまたその雰囲気を増幅する、微妙な位置におわす方々。

ごくたまに有るアニメは他局でやっていたやつの再利用か、
ほとんど絵の動かない、往年の電気紙芝居を彷彿させる出来。
何よりもその局名が、 それら流されてくる映像に説得力を持たせていた。
だって、他局は東京1チャンネルとか6チャンネルって言わない(笑)。
ましてや、チャンネルの端っこ、ほとんど使わない「U」の隣り(笑)。
 
この局は科学技術教育局として始めるという、最初から重荷を背負わされていた。
それは、当時から見る人が見れば、絶対に立ちゆかなくなること必定の所業であった。
背景としては、本家ブログの方でも書いた事が有るけれども、
最後の最後に残ったチャンネルの熾烈な争奪戦と、
大宅壮一を代表とする、テレビ(特にバラエティ物)に対する風当たりの強さとが有った。
 
しかし、新聞社に独占させる事に強烈な異議を発していた有力政治家・河野一郎と、
テレビ警戒派の論客・大宅とが相次ぎ逝去した事により、
この局はようやく、他局と肩を並べようという意思を持つ事を許される。
田中角栄がかねてより意中に有ったであろう日経新聞が堂々支配し、
教育局の枷を外されて、一般局としての番組制作を許されていく。

ところが、昨日まで教育局として教育番組や学術番組ばかり作っていた局が、
枷が外されたと同時に、それまでの憂さを晴らすかのように、
一気に極端なオゲレツ番組を量産してゆく事となる。
そうした、一種キワモノ的番組の質量も、この局の番外地感を彩った。
一部の番組を除いて、「12チャンネルだからな」という見方をしていたものだ。

著者は、まずTBSでアルバイトとして経験を積んだ後、
新局12チャンネル発足と同時に、その経験を活かそうと飛び込んだ者である。
開局以来の作り手として、数々の有名番組の内情を知悉しており、
おそらくこれ以上の本は出せないだろうというくらいに語られている。
東京12チャンネル・テレビ東京で制作された番組の有名どころは、
ジャンルを問わず概ね触れられている。

TBS時代の下積みが活きているのか、不思議なほどの人脈に恵まれている著者で、
こんな番組よく12チャンネルで出来たと感心するようなものを、
彼の尽力で実現させてもいるようだ。
例えば高倉健と鶴田浩二の共演など、返す返すも見ておきたかった。
ドラマには頑なに出なかった高倉が、そこでは珍しい歌声を披露したらしい。
絶対にビデオに残すべき映像であったと思うが、例によって望みはかなり薄そうだ。

ここで語られている番組の数々は、正にテレビ東京の社史を彩るものであり、
また日本のテレビ史の中で、異彩を放つものの羅列でもある。
題名のない音楽会、人に歴史あり、ダイヤモンド・サッカー、 ローラーゲーム、
おとなの時間、ハレンチ学園、金曜スペシャル、おしゃべり泥棒、凸凹大学校、
演歌の花道、おはスタ、キャプテン翼、ポケモン等々。
異才の局の制作内情を知るには、絶対に外せない本である。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:7
  他では望み薄な特殊番組の語り残し。ここまで語った本はもう出ないだろう。

面白さ:7
  扱う番組数との兼ね合いが難しいが、全体を主眼としているので掘り下げは甘め。

必携度:7
  東京12チャンネルを知ろうとすると、社史の他にはこれを絶対に外せない。

入手難度:3
  元ローカル局なので競争率は低い。探せば苦労せず手に入る。