黄門様はテレビ好き
書 題:黄門様はテレビ好き
副 題:
著 者:逸見 稔
出版社:近代映画社
発行年:1993/11/10
昭和テレビ好きなら覚えていない者はいないであろうCMソング、明るいナショナル。
その制作を初仕事としたと言うから、なんという超幸運の人物であろうか。
御大・松下幸之助に出来上がったものを聞かせると、開口一番、
「そのテープレコーダーはどこのや?」とのたまったと言うのが可笑しい。
東通工と呼ばれた当時のソニーが作ったテープレコーダーは、
異才の結実させた商品で、まだ大松下の手掛けていない物であった。

以来、著者は、松下電器東京宣伝部社員として、ラジオ・テレビ、
なんでもナショナルのために駆けずり回る事となる。
CMソングの制作に始まり、ナショナル坊やの設定、
そして最先端の媒体、ラジオ、テレビの番組提供を為していく。
こうして、世に言うナショナル劇場が誕生していく。

日本のテレビ史上でも非常に珍しいと思われる、 
提供会社・スポンサー側からのプロデューサーとして、
宮城まり子主演の『てんてん娘』に始まるナショナル劇場を中心とした
数々の名番組を手掛け、世に産みだしたのが、実はこの著者であった。
TBSのナショナル劇場から、NETのナショナルゴールデン劇場へと、
その辣腕は舞台を移してゆく。

青春ドラマの元祖のような『青年の樹』での盛り上がりから、
念願の森繁久彌を中心に据え、いよいよ一時間ドラマへと脱皮させ、
ナショナル劇場を不動の地位に押し上げた『七人の孫』とヒットを連発し、
その上にクイズ番組の『ズバリ!当てましょう』までズバリと当ててしまう。
そんな豪腕辣腕ぶりだったが、制作側にしてみれば目の上のコブでもあったか、
『真田幸村』あたりから著者の目指すものとの齟齬を感じ始め、
著者は一旦、ナショナル劇場から離れる。

ナショナル劇場の一時の低迷は、そこから始まっている。
たしかに列記された番組名を見ても、こんなのやってたっけ?
と思うようなものが並んでゆく。
他方、NETのゴールデン劇場の方は、フルーツシリーズや、
『だいこんの花』に代表される野菜シリーズなどで独自の盛り上がりを見せていく。
ついに根をあげたTBS側が、外部他社制作でも良いとまで折れて、
著者に制作へ戻って欲しいと懇願する。

そうして彼が手掛けた『S・Hは恋のイニシャル』は、またヒットとなるのだった。
だが、そのラブコメディー現代劇のヒットを受けた次作が、
まさか『水戸黄門』になろうとは、著者以外の誰にも理解できない事であった。
御大・幸之助翁の「世のため人のためになる番組を提供せよ」という大号令を受け、
著者が捻り出したものが水戸黄門で、当初は森繁久彌を当て込んでいた。
結局それは東宝の難色で頓挫するのだが、森繁は『だいこんの花』を始めとした
ゴールデン劇場の現代劇を盛り上げていく事となる。

例によって次々と繰り出される、昭和の名優・名番組の数々とその内情に、
昭和テレビファンならこれまた立ち所に読了してしまうこと必定である。
テレビ局側でもない、出演者側でもない、番組提供スポンサー側から
番組制作に直接的に関わるという、非常に特異な立ち位置にいる人物も、
昭和テレビマニアであれば、記憶に留めておくべきであろう。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:7
  記憶語りが中心であるが、TBS・NET双方のナショナル劇場歴代番組データも有る。

面白さ:7
  文章構成は余り上手くはない。しかし、語られている内容は非常に貴重で、面白い。

必携度:5
  松下電器提供番組にほぼ限られているので。

入手難度:4
  探せば入手は容易。