日本テレビとCIA
書 題:日本テレビとCIA
副 題:発掘された「正力ファイル」
著 者:有馬哲夫
出版社:新潮社
発行年:2006/10/20
先の大戦で原子爆弾という大量殺戮兵器を投下され、敗戦を余儀なくされて以来、
日本という国はアメリカ合衆国の出先機関として組み込まれてゆく。
数千万もの黄色い猿が犇めく国をハワイのように無理矢理に統合すれば、
逆に国家運営を乗っ取られてしまう以上は、宗主として君臨する以外に
アメリカが日本を統治する手段は無かった。

である以上、直接的に日本を統治させる傀儡が必要とされる。
それが影の児玉誉士夫や笹川良一であり、表の岸信介であった。
いずれもA級戦犯からA級待遇へと手の平を返すもてなしをし、
代わりにアメリカの意図する日本への変質を手掛けさせた。
無論、往時の名の通った日本人は一本の筋が通っていたから、
唯々諾々とそうした指令に従っていたばかりでもなかろう。

読売新聞社主・正力松太郎も、そうしたA級戦犯からアメリカ傀儡コースを辿った。
もちろん正力も筋の通った人物であったろうから、徒に従っていたわけではなかろう。
「テレビの父」「原子力の父」と賞賛されてきた正力であったが、
その実そのどちらも、アメリカの反共政策に則った動きであり、
そうでありながら、正力は、それが日本のためにもなると信じてもいたろう。
いずれにせよ、日本に於けるテレビジョンというものは、
アメリカの反共通信網として意識されたものであるという出自を持つ。

この本は、そのような戦直後に於ける日本とアメリカの鬩ぎ合いを、
ほぼ正力松太郎と日本テレビ放送網のみを媒介として、活写していく。
非常に膨大であろう、公開を許可されたアメリカCIA極秘文書を読み解き、
明快に論理的に組み立てて提示していく。
日本テレビ社史にも記述される事柄や人物の裏面史が構築されている。
それら正史と併せて通読すると、より深く日本のテレビの成り立ちを理解できよう。
返す返すも、アメリカのこうした情報公開は有益な制度であるが、
世界が不健全へと舵を取り始めている現在であれば、 彼の国でもそれは危うくなっていくかもしれない。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:9
  基本はCIA公開の公文書に基づくが、その他も出典がきちんとしている。

面白さ:4
  以前から噂では流れていた事を、公文書で補完したという事。

必携度:1
  相当程度テレビ史に興味ある人以外には不要だろう。

入手難度:1
  宝島から文庫になっている。真面目に買った人は馬鹿だという出版界。