カータンのなみだ
書 題:カータンのなみだ
副 題:声優伝・大竹宏
著 者:山口真一
出版社:新風舎
発行年:1999/3/31
フジテレビで昭和41年から57年までの長きにわたり、
毎朝の子供たちを楽しく園・学校に送り出してくれていた、ピンポンパン。
殊に、坂本新兵に次ぐ長期出演をしていた河童のカータンという存在は、
当時の子供たちの心に深く入り込んでいた。
先発・日本テレビの『おはよう!こどもショー』で人気を博したロバくんに対抗すべく、
あちらが声優・愛川欽也自ら中に入ってやっているのだからというわけか、
カータンの中に入っていたのも、実は声優・大竹宏その人であった。

着ぐるみの中で演技するというのは、演者にすれば辛い事が多い。
肉体的にキツイのは言うに及ばず、精神的にも、顔出しが出来ない等、
俳優としての様々な部分を押さえつけながらやらねばならない。
そうした幾多の想いを重ね合わせてきた星霜の末に決断された勇退は、 
番組そのものの末期にも重なっていたため、
それほど多くの視聴者に記憶されているわけでもないだろうし、
番組スタッフの心も、些か荒み気味でもあったかもしれない。
だが、終了後に行われた胴上げの時に、カータンは涙を流していた。
その顔の中の顔で。

声優として多くの当たり役を持つ大竹宏の、これは自伝ではなく、
他者による伝記的ノンフィクションである。
執筆者が本人でないため、特に取材対象に甘い視点になったり、
逆に取材対象が関わった事象に対してきつい視点になったりというのは有ろう。
ノンフィクションというのは、そうした点も踏まえつつ読む必要が有る。
それでも、大竹宏という人物の実像の何割にかは近づける事は確かであろうし、
ピンポンパンという番組の内情を知る事が出来る一面である事も間違い無い。

パーマン2号、ニコニコ忍者、怪物くんのドラキュラ、アッコちゃんの大将、
そして極めつけとして、もーれつア太郎のニャロメを演じた男。
その生い立ちから『チロリン村とくるみの木』のような初期テレビ番組、
そして黄金期のテレビ番組との関わりが綴られていくが、
やはり中核はピンポンパンという番組との関わりであり、
量としてもそれなりのページ数が割かれている。
ピンポンパンについて少しでも深く知りたい人は、やはり外せない本である。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:4
  記憶語りを更に他者が著した、完全な読み物。

面白さ:6
  どうしても聞き書きのような感じとなるので、臨場感は弱い。

必携度:4
  ピンポンパンという番組や、声優としての大竹宏に興味が有る人向け。

入手難度:2
  購入層が限られているだろうから、安価で入手可能。