キカイダー大全書 題:キカイダー大全
副 題:人造人間キカイダー キカイダー01の世界
著 者:岩佐陽一(編)
出版社:双葉社
発行年:2002/4/5
岩佐陽一による、昭和子供番組大全シリーズ。
数多く出版されているが、どれも基本的に同じ構成なので、統一して解説する。
まず言っておくべきは、このシリーズの書物はどれも、
一冊持てば他の資料が要らないだろうというくらいに充実している。
だが個人的には、充実しすぎているとすら思う引っかかりが有ったりもする。
恐ろしいまでの仕事量。マニア・ヲタクと呼ばれる層がゾロゾロいる番組群を扱い、
誰もケチの付けようが無いだろうという徹底した仕事ぶりには、純粋に敬服する。

この手の番組解説資料本の内容として考えられるところでは、
関係者へのインタビュー、番組リスト(サブタイトル・放送日・キャスト・スタッフ等)、
制作資料、各回解説、周辺商品紹介、登場人物紹介 等々であろうか。
このシリーズでは、その全ての内容が詰まっている。
それも、半端ではない情報量で。
だから、一冊持てばその番組では他の資料は要らなくなるとまで書くのだが。
これは、非常に多くの読者にとっては、この上なくありがたい事であろう。

それを踏まえた上で、非常に個人的な感想も書き記しておきたい。
ワタクシは個人的に、このような一つで全てをやってしまおうとするものが、
あまり好きではない。
と言うのは、こういうのが出てしまうと、もうその番組についての資料本を
出そうなどという意欲を、他者が持つ事はとても難しいであろうからだ。
まあせいぜい有って、当事者による回顧本くらいであろう。
第三者による研究図書は出しようが無いくらいの決定版である。

しかしそれによって、その世界の切り口が画一的になってしまわないか、
という事まで、ワタクシのような立場の者は考える。
特にこの手のジャンルは、幾らでも語りたい人間が輩出されてくるであろうものだ。
商業誌でなくとも、同人誌でもやりたい人間は数多いはずであるが、
このシリーズは、本来同人誌が担うべき部分も丸ごと持って行ってしまっているのが、
ワタクシに一種の懸念と不快感を抱かせているのだと思う。
それも、最後に一覧を記すが、次から次と様々な番組で。
ただ、関係者インタビューなどその時に実現させておかなければ
二度と実現しないものなども有るし、やはり功の部分の方がはるかに大きいだろう。

ワタクシは、ウィキペディアの一部の項目も、苦々しく見ている。
百科事典などは表層的な事象を解説すれば良いものであって、
個々の細かい事象は、それぞれまた別の部分が担えば良い物だと思う。
Webの場合は、それぞれのファンサイトが担えば良い事であって、
あのような大手が何から何まで網羅的に載せようとするのは、
Web上の多様性を奪うのではないかと懸念もする。
タレントの解説などで、ここまで載せる必要有るか?と思うような
非常に細かい言動まで箇条書きで物凄い分量で書き連ねているのは、
見た目も非常に見苦しいし、百科事典としての利便性を阻害すらする。

勿論、より専門的に調べたい利用者にとっては、一ヶ所だけ調べれば
Web上に存在する情報の全てに触れる事が出来る方が、利便性は高いだろうが。
だがワタクシは、様々な人物による様々な切り口に触れたいという性向である。
前述したような日常的な言動などは、ファンサイトに任せておけば済む事と思う。
ファンサイトが無いような事に関しては、そこまでの需要が無いという事で、
そのような細かすぎる情報は、逆に邪魔としか感じないであろうし。
とにかくヲタク性向というものは、物事に異様に拘る性質をも伴うもので、
それが研究者としては必要とされる資質である事は間違い無いのだが、
その特質を自覚して、一歩も二歩も引いてみるという視点を持った方が良いだろう。

とまあ非常に個人的な観点の文句を書いておいたのは、
ひとえにこのシリーズに難点が無さ過ぎるという事なのである。
多くの人にとっては、これさえ持っておけば、その番組について他の本は要らないくらいだ。
関係者インタビュー一つ取っても、主要キャスト・制作者・脚本家等々、
様々な立場の人物のものが掲載されているし、
周辺展開にしても、物凄い種類と分量の物が紹介されている。
各回内容も細かく描写されているし、サブタイトルは画面写真まで掲載されているし(笑)、
各回予告編まで完全紹介されている。
やっぱり、これさえ有れば他は要らないな(苦笑)。


岩佐陽一・大全シリーズ (順不同)

昭和特撮大全
キカイダー大全
仮面ライダー大全
仮面ライダーV3大全
仮面ライダーX・アマゾン・ストロンガー大全
電人ザボーガー大全
イナズマン大全
ゲッターロボ大全
ゲッターロボ大全G
ゴレンジャー大全
アクマイザー3・超神ビビューン大全
シルバー仮面・アイアンキング・レッドバロン大全
レインボーマン・ダイヤモンドアイ・コンドールマン大全


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:10
  これ以上の資料性は有り得ない。決定版。

面白さ:6
  資料性の強い物だけに、面白さはあまり無い。

必携度:7
  それぞれの番組に関する資料を持ちたい人は、この一冊でほぼ大丈夫。

入手難度:5
  入手そのものは難しくない。