スペクトルマンvsライオン丸書 題:スペクトルマン VS ライオン丸
副 題:うしおそうじとピープロの時代
著 者:鷺巣富雄
出版社:太田出版
発行年:1999/6/26
日本初のカラー巨大ヒーロー特撮ドラマと言えば、
多くの人がウルトラマンを思い起こすだろうが、ヲタクにとっては常識的問題。
マグマ大使なのである。
そのマグマ大使を作った制作会社が、ピープロダクション。
そのピープロの社長が、著者の鷺巣富雄。又の名を、うしおそうじ。
戦後漫画黎明期に活躍したうしおの名を、覚えている漫画ファンも少なくないだろう。

とまあここまでは、いわゆるヲタクの類には常識的知識。
ところが更にその前に、彼が東宝で円谷英二と共に働いていたという事になると、
知っている人間は極端に減るのではないか。
つまり鷺巣富雄は、漫画家時代の縁で手塚治虫にマグマ大使の
映像化権を貰ったというのは知っている人が多いけれど、
そのマグマと張り合うような形に見えたウルトラマンの円谷とも、縁が有ったのだ。
正に、実写とアニメを縦横に使っていたピープロという会社の特性は、
社長の経歴がそのまま反映されていたものだったのである。

この本は、基本的に鷺巣の語り残しである。
但し、いわゆるモノローグではなく、インタビュー形式のものである。
ところが、インタビュアー名がハッキリとは記述されていない。
このインタビュアーが大変な知識で、映画本編の話から芸能全般の話まで、
幅広く展開していく鷺巣の話について行っていると言うか、
きちんと読み手に判り易いような聞き返しまで怠っていない。
相当な知識量か、事前の勉強が入念に為されているか。
どちらにしても只者ではない技量で、名前を明記しないのは頂けない。
執筆・構成として但馬オサムという名が複数あるので、おそらく彼だとは思うが。

鷺巣の話は異常な面白さだ。
戦前に東宝に入社し、戦争たけなわの頃には戦意高揚映画に関わっていたという。
戦後、GHQに知られたら戦犯認定間違い無しの所業であるが故に、
その体験談は長く封印されてきたのだろう。間に合って本当に良かったと思う。
勿論、彼が戦中に関わった映画は全てが処分されてしまっている。
おそらく二度と陽の目を見ないであろうもので、本人も惜しがっているが、
やむを得ない事態だったとは言え、つくづく惜しまれる。

そんな話を皮切りに、円谷英二との意外なる親密な関係、
漫画家時代、そして、ようやく本題の(笑)ピープロ時代と、
まるで講談並の面白い話が次から次へと繰り出される。
つくづく記憶力の良さに驚嘆させられる人で、多くの記憶語りで、
登場人物や場所の記憶、会話の内容まで、非常につぶさに描写している。
しかも、残っている史資料と照らし合わせても整合性がきちんとしており、
おそらく語っている内容は、ほとんど信用に値するであろう。

他に、息子で著名な音楽家の鷺巣詩郎はじめ多くの関係者のインタビューコラム。
こちらも、なかなか興味を惹く話が満載である。
この手の本の最低仕様として番組データ類や放送リストも有るが、
それらはハッキリと付け足しのように、申し訳程度に有るに過ぎない。
この本は、あくまでも鷺巣富雄の個人史記憶語りなのである。
タイトルが東映まんがまつりの観客釣りをパロッた感じだが、なかなか考えたと思う。
とにかく、企画者の技量がいろいろ優れている。
でありながら、著者名を鷺巣にしているという慎ましさ、節度も素晴らしい。 


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:7
  とにかく貴重な話満載。但し資料的な裏打ちまでは保障していない。

面白さ:10
  この手のものが好きな人なら一気に読破してしまうのでは。

必携度:5
  なにしろピープロ限定なので。

入手難度:5
  アマゾンに複数出品されている。