NHK連続人形劇のすべて書 題:NHK連続人形劇のすべて
副 題:
著 者:池田憲章・伊藤秀明
出版社:アスキー
発行年:2003/4/30
テレビも50年、人形劇も50年と帯にある様に、テレビ50年の節目に出された
数多くの回顧本のうち一つである。
と言うと変哲もないが、中では非常に傑出した一書と言えよう。
子供向け番組回想ではほとんど老舗の様な書き手の池田憲章と、
彼との共同作業の多い、サンダーバード研究家という伊藤秀明の共著である。

それでいて、よくある大全シリーズの様な、マニア以外にはハードルの高い
データ強突張りといった風情の編集ではなく、非常に読み易い本となっている。
これはおそらく、企画・編集として表記されている片岡力の感性に拠るのだろう。
カラーページでは、これでもかと様々な人形達の写真が掲載され、
モノクロページでは、よりマニア向けに充実したデータを掲載している。
但し文字サイズが小さいので、ページ数はそれほど占拠しておらず、
データなんかに興味の無い人は飛ばすのも簡単だ。この辺が良い感覚だと思う。
まあ、物理的にページ数の制約が有っただけなのかもしれないが(笑)。

様々な分野の関係者へのインタビュー、データを扱っている番組については、
物語の内容までけっこう細かく紹介されていて、完成度は高めと言える。
惜しむらくは、NHK限定である事。しかも、それも全番組ではない事。
初期の番組に関しては資料が少ないのは理解できるが、
こうした機会にこそ、もう少し突っ込んで制作して欲しかった。
ただこの辺に関しては、先の片岡によるあとがきが素晴らしかった。

そこでは、扱っていないものに関して率直に触れるとともに、
テレビは人形劇活動全体から見たらほんの一部に過ぎず、
実演こそが人形劇の本来の在り方だという主張を紹介する。
地道に、直に子供達を相手に活動している人々からすれば、
それは当然の主張であり、また、おそらく正しいのだろうと思う。
いや。実はそれは、人形劇に限らないのだ。
少なくともワタクシは、そう総括している。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:8
  扱われている人形劇に関しては、ほぼ文句の付けようが無い。

面白さ:7
  返す返すも、NHK限定というのが残念。

必携度:7
  この資料性なら持っておいた方が。

入手難度:7
  アマゾンに複数出品されているけど高い。