昭和思い出の記書 題:昭和思い出の記
副 題:大映テレビ独立の記録
著 者:安倍道典
出版社:講談社出版
発行年:2005/5/21
著者は大映テレビ部門独立の功労者であり、30年もの長き間、大映テレビを支えた人である。
そして、本書の副題が「大映テレビ独立の記録」である。
誰だって、大映テレビに関する本だと思ってしまうだろう。
だが、看板に偽り有り。
決して著者の本意ではなく、出版側の事情を考慮したのだろうが。

大映のワンマン社長として鳴らした永田雅一と大映の軌跡は、
独裁という物の姿を如実に見せてもくれた。
上手く回っている時は即断即決で事態が早く動くのだが、
翳りが生じると、判断の過ちを是正できない。
ワンマンでありながら聞く耳と適切な判断力を持っていれば良いのだろうが、
ワンマン社長となるような人物は、そもそもそうした素養は欠如しているのかもしれない。

大映テレビは、元々が映画一辺倒だった永田の気紛れで存在を許された感じだが、
逆に永田の過干渉に合わずに済んだため、永らえる事が出来た。
但し、大映本体の末期の渦には巻き込まれそうになり、
本当にすんでの所で脱出を実現できた、昭和テレビ史に刻まれる一つの軌跡である。
そこにはTBSという局、そしてそこの重鎮編成マンが関与しているのだが、
この本ではTBS側に関する記載はほとんど無い。

資金的にもかなり重要な位置を占めたそれが記載されていない理由は不明だが、
他局のやっかみを起こさないようとの配慮なのだろうか。
あの世界の人間なら、おそらく誰でも知っているであろう有名な事だと思うのだが。
こうしてTBSは、松竹からの木下恵介、TBSからのテレパックに続き、
また強力なドラマ制作会社と緊密な関係を作り上げた。
ドラマのTBSは、引き続き暫くのあいだ不動の位置を占め続ける事となる。

こうした話が語られるのは後半部で、文字通り、本書の前半分ほどは、
著者個人の備忘録のようなものである。
その郷土の者や関係者には面白い話なのかもしれないが、
副題に釣られて買った人の殆どは、失望に近い感覚を持ったろう。
ただ、話そのものは昭和の記憶語りとして興味深い。
あくまでも副題が悪い。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:3
記憶語りがほとんどで、内容も限定的。

面白さ:5
最後の最後でようやく、手に汗を握るような大映テレビの独立劇となる。

必携度:3
熱烈な大映テレビファンは、最後の最後に揃えても良いかも。

入手難度:3
アマゾンに複数あり。