おはよう木島則夫です書 題:おはよう木島則夫です
副 題:「モーニング・ショー」こぼれ話
著 者:木島則夫
出版社:講談社
発行年:1966/3/28
テレビ放送開始から十年以上経っても、まだ未開拓だった朝の時間帯。
その不毛と言われた時間帯を開拓したのが、日本教育テレビ、
後のNETテレビである事は、テレビ史に刻まれている事である。
この本は、その当の当事者たる司会者である木島則夫が、
なんと放送中である昭和41年に著している覚え書きである。
当事者による、同時代の資料であるから、資料性は超一級と言って良い。

内容は、起用に至るまでの裏話はさほどに詳しくなく、
やはり実際に番組を始めてからの話が中心となっている。
その代わり、モーニングショーに関する裏話は、文字通り満載だ。
それもそのはず、まだ放送開始三年目という、記憶も生々しい時期の著であるから、
様々な回の様々な話が、これでもかという生の力で押し寄せてくる。

読んでいて実感するのは、木島則夫という人、いや、
当時の日本人というか、或る程度の地位にいる人と言うべきか、
その人品の確かさである。
なんと当時、木島は番組終了後、30分ほども視聴者からの電話に、
直接自分で応対していたのだという。
こんな番組造り、今も残っている所が有るのだろうか。

事件・事故の現場にも、木島は自分で乗り込んでいった。
放送前日に翌日の取材現場で自ら下見をして臨んでいた。
昭和39年の昭和電工タンク爆発事故の際、夜8時に現場に着くと、
遺族の方々が体育館に詰めていて、報道陣は近寄れなかった。
その時、一人の女性がトイレに出てきたので、彼が後をつけると、
その女性は囲まれた場所で一人になるや、堰を切ったように泣き出した。
木島則夫は、とてもマイクを向けられなかったという。

取材者としては失格と自らを窘め、自分をどやしてやりたい衝動にかられたと書く。
でも、本当はそうではないだろう。
本当は、「そんな事はありません。あなたの取った行動は正しいのです。
取材者である前に、誰だって人間でなければならないでしょう」
というような事を、第三者に言って欲しかったのであろう。
そして、ワタクシもそんな言葉を、ここで彼に書きたいと思う。

あの大震災から、政治家やマスコミの御為ごかしがどうにも許せなくなった。
それまでだって腹は立っていたけれど、もう看過してはいけないと思うようになった。
あんな時にまで自分達を殺せず、見栄と欲と我を貫いた連中が、
市井の人々に何を講釈垂れる資格が有るものか。
連中は間違い無く、今や人間の最底辺にいる。
もし、こう言われて悔しい人がいるなら、この本を読んでみるべきである。
往時のテレビ人が、まだ人としてまともだった頃の言葉を。
きちんと自分で取材し、視聴者と語り、人の心を持って当たっていた人の言葉を。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:9
モーニングショー限定とは言え、放送当時の覚え書きが数多く列記される。


面白さ:8
丸山(美輪)明宏がヨイトマケを歌った前なので、その話が無いのが残念。


必携度:8
朝ワイドの歴史を踏まえる上でも、ぜひ目を通すべき書。


入手難度:7
中古市場で散見されるが、価格がやや高め。