アニメ・特撮ヒーロー誕生のとき書 題:アニメ・特撮 ヒーロー誕生のとき
副 題:ウルトラマン、宇宙戦艦ヤマトから六神合体ゴッドマーズまで
著 者:藤川桂介
出版社:ネスコ(日本映像出版)
発行年:1998/8/9
昭和のアニメやヒーローもの特撮が好きな人なら、
その名を聞いた事が無い人はいないであろう著者の自伝である。
そのテレビ脚本デビューは昭和33年『東京0時刻』というから、
元々は純然たるドラマ脚本家として始まっている。
もっとも、更にその前にはラジオのトーク脚本、
更にその前には、食うや食わずで死にかけた事もあったという。

そんなデビュー前、デビュー当時の話は、巻末間際で語られる。
まずは「特撮時代」と称し、 ウルトラマンに始まる円谷作品、
スペクトルマン等のピープロ作品、東映でのロボコン等々にまつわる話。
次に「アニメーション時代」と称し、 ムーミン、さすらいの太陽等々続くが、
勿論、決定的に訴求力を持つのが、宇宙戦艦ヤマトに関してだろう。

この本では、登場人物は基本的に実名で登場する。
ところが、ヤマトの稿ではN氏と仮名で呼ばれる人物が登場する。
ヤマトの誕生にあまりにも深く関わっているこの人物、
こんな本を読んでいる人なら誰でも「西崎だろ!(笑)」と突っ込んでしまう。
マニアにはあまりにも有名な西崎義展をわざわざ仮名にしているのは、
勿論、実名で書くと差し障りが生じるという理由ではあるまい。
誰がどう見たって西崎以外に有り得ないのであるから。
要するに、口にするのも憚られるほど忌み嫌っていたのであろう。

この本を読んで思うのは、往時の文化人とはなんと知的で、
しかも誠実な人物であろうかという事である。
同じ様な位置にいる辻真先など、テレビ黎明期の作り手には、
そうしたものが感じられる人が多いのである。
この理由の一つには、彼らが或る程度恵まれた位置で生まれ育っている、
というのが非常に大きいだろう。
テレビはその昔、金持ちの物だったのである。

そんな藤川であるから、この本全体には、非常に爽やかな印象を持つ。
ヤマトもドロドロ描かれているわけではないのだけれども、
それはこの藤川だからこの程度の表現で抑えているというのが、
手に取るように解るのがまた可笑しい。
西崎に関しては、関わる人のほぼ全てが泣かされているのだろうけど、
そんな人物が、トリトンだのヤマトだのといった作品を産み出し、
日本のアニメ文化を勃興させた事は、紛れもない事実である。
げに、天才とは色々と凡では有り得ないのであろう。

「日真名氏とび出す!」「月曜日の男」といった、
本当にテレビ初期の有名ドラマにも関わった著者であるから、
誕生間もない頃の人材不足のアニメ界では、
殊の外頼りにしていたようである。
成長したアニメ界がドラマ性を求めた時、白羽の矢が立ったのが著者だった。
矢を放ったのが西崎だった事も、また事実なのである。
そうしたヤマトを最大のヤマ場にして、数々の子供番組の
誕生秘話が惜しげも無く綴られていくのであるが、
個人的には、もっと一般のテレビ番組も詳しく語って欲しかった。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:7
 非常に数多くの作品の秘話が綴られている。

面白さ:7
 番組数が多いという事は、掘り下げは少なめ。流石にヤマトは多く語られている。

必携度:7
 この作家のテレビ史的重要度は高い。

入手難度:7
 中古が無いわけではないが価格が高め。