テレビの青春書 題:テレビの青春
副 題:
著 者:今野 勉
出版社:NTT出版
発行年:2009/3/30
かつての民放の雄・TBSの、テレビもいよいよ
その力の片鱗を見せていた昭和34年入社組6名。
この本の主人公は二系統あって、まずは著者である今野。
しかし、それとほぼ必ず並行するように、残り5名の動きが描かれる。
更には先輩後輩入り交じる、かつての雄を構成していた、
何れ劣らぬ歴戦の作り手達や、時には他局、
他の業種の者たち、更には世相なども併せて描き進められる。

その6名とは今野の他、村木良彦、高橋一郎、中村寿雄、
並木章、そして特撮マニアには有名な、実相寺昭雄。
6名はAD(アシスタント・ディレクター)時代に
「dA(ダー)」という同人誌を興し、業界の注目を浴びた。
その姿勢は、物語、とりわけヒューマニズムを弾劾するもので、
ワタクシの好みとは真反対のものである。
まだテレビに芸術志向の存在が許された時代の、
先鋭的な若者達が集合した迸りと言えよう。

やがて六名は各々一本立ちしていく事になるのだが、
この六名に限らず、当時のテレビ界、中でもおそらく特に、
TBSという局には、こうした先鋭的な猛者が割拠していた。
時あたかも日米安保で世上騒乱の折、そうした思想信条も絡みながら、
テレビも、その作り手達も、青春真っ盛りを過ごす。
この本は、そうした様子を、まず今野自身、次に同期他五名、
更には他のTBS局員、そして時に他社、他業の猛者の体験で綴る。

執筆時に存命していた者に関しては、その時点での取材なども加え、
あくまでも執筆者としての冷静な視線で、今野は綴っていく。
その技法は、まるで新聞社による出版物のようですらある。
そして、そうした「テレビの青春時代」は、今野や村木らが中心となる
テレビマンユニオンの設立をもって、一区切りとなっている。
ちなみに今野は現在では、放送人の会が横浜情文でやっている、
放送研究のイベントで、いつも進行役のような事をやっているのを見る。
作り、そして残し、伝える事にまで心血を注ぐその姿勢には、
ただただ感嘆するのみである 。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:8
 「まえがき」でまず記憶の不確かさに言及し、資料を数多く駆使。文献紹介も怠りない。

面白さ:7
 六名の動向が逐一記され、そこから当時のTBS全体の空気が掴み易く感じられる。

必携度:7
 数多くの初期番組、初期制作者の挿話が満載。実相寺ファンも外せない書。

入手難度:2
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