世界名作劇場大全書 題:世界名作劇場大全
副 題:20世紀テレビ読本
著 者:松本正司
出版社:同文書院
発行年:1999/8/15
数十年も固定枠として親しまれたアニメ枠であり、
なおかつヲタクと呼ばれる層にも受けが良さそうなのに、
何故だかその手の資料本が皆無に近かったのが、
フジテレビ日曜19時半からの、いわゆる名作アニメである。
その理由の考察はこれからの課題だろうが、
ワタクシの思うに、名作であるが故に、ファンが遊べない、
遊んではならないという、良い縛りが、
もっと愚直な言葉で言えば、「良識」が働いていたのだろう。

だから、ヲタク連中も子供時代に…
いや、ヲタク連中なら大きくなってからこそなのかな?(笑)、
見ていたに違いはなくとも、熱狂的に持て囃す心情にはならず、
必然、資料的な要請も大きなうねりとはならなかったのだろう。
第一、どれもこれも一話一話は地味な話が多く、
各一作毎にファンコレのような本を作っても、
たしかに訴求力は小さいかもしれない。
 
しかし、この本のようにひとまとまりにした本すら、
これが実質的に初めてだったというのは、さすがに少なすぎだろう。
そんな鬱憤を晴らすかのように、この本の充実度は素晴らしい。
たしかに、これ一冊あれば、もう要らないかもしれない(笑)。
あとは、一作毎の本が充実してくるかというところか。

内容としては、資料的なものは、ほぼ完璧に網羅されている。
加えて、ストーリー紹介も万全で、これを読めば、
どんな話だったかが起承転結余さず理解できる、
とまで言ったら言い過ぎなのか。ワタクシにはそう思えるが。
更に、原作本・作者の紹介も怠りない。

この著者、元々は日本アニメ内部で働いていたというだけあって、
関係各位のコメント取りも万全で、内輪ネタの多さは類例が無い。
この手の本の著者は大抵がヲタクそのもので、
そのヲタクが関係者に取材を試みるという形がほとんどなのだが、
この著者は画期的に、元制作側であるヲタクなのだ(笑)。

なので、押さえるべきツボはほぼ完璧。
ただのアニメヲタクではなく、コレクター道に堕ちたヲタクでもあり(笑)、
同様にコレクター畜生道に堕ちた我が身としては、
他人事として読めば面白いコラムが多かった。
中でも目を惹いたのが、他ならぬ「オタク」の語源である。

元関係者でありながら、内容の評価は非常に正直である。
末期の、名作アニメの箍が外れた作品に関しては、
一介のファンとしての視線を外さず、辛辣な評価を憚らない。
そしてそれは名作ファンなら誰もが否定できない、正論であろう。
だから読んでいても、何一つ不快でないどころか、
清涼感のみしか感じないのである。

加えて、この手の関係者が書いた文としては非常に例外的な、
放送局や、分けても代理店への皮肉も、この著者ならではである。
代理店のやり方に疑義を挟むという事は、
大いに死活問題となろうが、現役を離れた身軽さが成せる業なのか?
それら全てが、名作劇場という枠への深い愛情に裏打ちされている。
宗教アニメとその論評に関して個人的な疑問は有るが、
全体的には紛う方無き、資料本の大傑作である。


 ★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:10
  元制作者の超ヲタクが作った本ですぞ(笑)。

面白さ:9
  内輪話から原作話まで、隅から隅まで餡子が詰まっている。

必携度:8
  アニメ関連も押さえたいなら絶対に外せない本の一つ。

入手難度:3
  古本で安く流通。