作曲家・渡辺岳夫の肖像書 題:作曲家・渡辺岳夫の肖像
副 題:
著 者:加藤義彦/鈴木啓之/濱田高志
出版社:ブルース・インターアクションズ
発行年:2010/7/2
渡辺岳夫。作曲家。
と言うよりも、ワタクシはテレビ音楽家と呼びたい。
まだ黎明期と言えた頃からテレビ番組の劇伴を生業とし、
ドラマは勿論、アニメ等の子供番組でも、
数々の忘られぬ名曲を紡いだ人物である。
父親の渡辺浦人も作曲家で、テレビの劇伴も担当したが、
岳夫の方が、よりテレビに特化した存在だったように思う。

もっとも、岳夫は始めから音楽の道をゆくとは決めかねていたようだ。
同級生に、あの山本直純がおり、子供時代は彼らと共に学ぶも、
長じて少し違う道を歩いてしまう。
直純は超天才肌の実力者で、少しアテられる部分が有ったのだろうか。
しかし遠回りしながらも、結局は父について回るようになり、
そのうちに少しずつ、おこぼれのようにテレビ音楽を受注する。

最初期に受けた仕事として、フジテレビの嶋田親一と知り合い、
彼の担当した『小天狗小太郎』の音楽を担当。
恐らく、これが岳夫の初めて担当したテレビ主題歌であり、
初のレコード出版だったと思われる。
そして後番組の『三太物語』も引き続き担当。
こちらは大人気番組となり、岳夫の作った主題歌が、
多くの人々の口から歌われる事となった。

以後は順風満帆、少なくとも表面的にはスランプが無く、
思いつくままに並べてみても、大奥、巨人の星、アタックNo.1、
アルプスの少女ハイジ、キューティーハニー、フランダースの犬、
キャンディキャンディ、機動戦士ガンダム、白い巨塔…等々…
数々のテレビ史に残る番組の、数々のテレビ史に残る音楽を作成。
特に耳に残るのは、大奥主題曲で判り易いチェンバリカの音。
昭和テレビ史上で、間違い無く十指に入る音楽家と言えよう。

この本は、既に早くして亡くなっていた彼の業績を、
関わった非常に数多くの人々の証言で浮き彫りにしていく。
そんな生の証言に加え、資料的な物量も半端ではない。
特に圧巻は、巻末の渡辺岳夫作品リストだろう。
簡潔に一言で言えば、渡辺岳夫の仕事を知りたければ、
この本を買わないと話にならない、という事に尽きる。

それにしても、数々の証言を読んでいて思ったのは、
本当に、父親の浦人ともども、好人物だったのだなという事だ。
浦人は、本当に誰でも家に上げてしまうような懐の広さで、
その子の岳夫は、加えてお坊ちゃん的な人の良さを感じ、
知性と品性とが兼ね備わった、真の大人の佇まいを感じさせる。
話を読む毎に、書中の人々と同じような気持ちが込み上げてくる。
良い人は早く亡くなるという話は、きっと本当なんだろうと。
そうでも思わなければ、あまりに惜しく、悔しいではないか。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:10
巻末の全作品とも考えられるデータ充実度には脱帽。

面白さ:9
家族、仕事仲間、そして教え子のような歌手たちと、幅広い取材。

必携度:9
幅広い仕事をした人物の情報が余さず手に入る。

入手難度:1
まだ通常の方法で入手可能。