ウルトラマン青春記書 題:ウルトラマン青春記
副 題:フジ隊員の929日
著 者:桜井浩子
出版社:小学館
発行年:1994/7/20
円谷プロによるウルトラシリーズ、
その第一作である『ウルトラQ』の江戸川由利子、
そして第二作『ウルトラマン』のフジアキコ隊員と、
初期ウルトラ二作に立て続けに出演した、
桜井浩子による自伝的ウルトラ回顧録である。

ほとんど新人同然といった頃からテレビ特撮に出演と、
映画俳優としての出自から考えれば、
やや異端の流れであったろうが、
そうしたデビュー当初からの話を、
大きく14程の挿話で綴り、それぞれ小説のように
ほどほどの長さで描写されている。

当時の気持ちをそのまま記述する事を心掛けている
感じで、まだ20になるかならないかという
若い女の子ならではの考え方も見えて面白い。
実相寺昭雄への思いも、なかなか正直に書いている(笑)。
だから読んでいる方としては、まざまざとあの時代の
作り手の空気が、桜井視点から見えてくる感じなのだ。
石坂浩二の起用が桜井浩子を介してとか、
興味深い話、面白い話が次々と続く。

子供向け番組の出演者には、その時代の話をする事を
嫌がる人間も少なくないし、著者も一時はそうだったという。
そうした人間の多くは、年を経て、それら作品が本当に
多くの人間から愛されていることを実感し、
ようやくその意義を本当に理解したりもしている。
著者もまた、そのような変遷を辿ってのこの著書なのだ。

ムラマツキャップ役の小林昭二を始め、
怪獣やウルトラマンの中で活躍していた人々、
危険と隣り合わせの特撮現場で奮闘していた人々、
彼らの真摯な物作りへの息遣いが感じられる。
後半は対談となっており、科学特捜隊が全員集合という、
桜井浩子の著書ならではの豪華陣容である。 


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:5
記憶綴りだが信憑性は高いも、読み物なので情報量は少ない。

面白さ:8
女性エッセイという感じの面白さ。

必携度:4
科特隊対談も有るし、ウルトラマニアの方は必読。

入手難度:4
  特撮本なのであまり安価では出回っていない。