橋幸夫歌謡魂書 題:橋幸夫歌謡魂
副 題:
著 者:橋幸夫 小野善太郎
出版社:ワイズ出版
発行年:1993/6/3
何故この本を買ったかというと、資料価値が素晴らしいからで、
特に橋幸夫ファンだというわけではない。
ただ、歌謡曲ファンではあるので、橋の歌でも好きなものは有る。
特に好きなのは「雨の中の二人」で、全ての歌謡曲の中でも
十指に入るくらいに好きな歌だ。

子供の頃、TBS歌謡曲ベストテンだか歌のグランプリだかで、
傘を差したダンサー達が二人ずつで踊る中、
橋が中央で歌っていた姿も、よく覚えている。
本人もこの歌を貰った時に手応えを感じ、
レコード大賞獲得へと一気に向かったという。

ところが丁度、この年からレコ大の規約が変わり、
その歌は年度違いとなってしまったために目算が狂い、
橋側は代わりに「霧氷」を押し立てて、舟木一夫と
史上に残る争奪戦を繰り広げる事となる。
本人も言うように、「雨の~」で勝負できていれば、
もっと色々と上手く行っていたと思う。

本の構成としては大きく二部に分かれ、
前半は小野が橋に問いかける形での対談形式。
後半は資料編となっている。
語っている内容は、歌手になるまでは勿論、
なってからは、シングル全曲を振り返る形となっている。

それにしても、なんと恵まれた、運の良い男だったのだろう。
遠藤実門下であったのに、コロムビアがデビューさせる
気が無いと見るや、遠藤はビクターへの渡りまで付けてくれる。
そうして橋は吉田正門下となるのだが、
遠藤実という人物の大きさに恐れ入るばかりである。

ビクターからデビューしてからも正にトントン拍子で、
ほとんど空白期の無いまま、歌にドラマにと大活躍。
吉永小百合との「いつでも夢を」で早々にレコード大賞を取り、
更には「霧氷」で二度目の受賞まで果たしてしまう。
この大賞二度というのは、歌謡曲が腐り出した昭和末期まで、
他には誰も果たす事が出来ない偉業であった。

昭和40年代中頃からやや停滞し始めるが、
「子連れ狼」が大ヒットしたり、司会業もこなしたりと、
それなりに長い事、テレビから消えなかった人であった。
その半生を知るには最高の書籍であるのは間違い無いが、
惜しむらくはコメント内容がシングルだけに偏っているし、
その内容もあまり豊富とは言えない。

本の威容だけは凄く分厚いのだが、紙が厚いためか、
中身はスカスカという感じである。当ブログ観点から言えば、
もっとテレビとの関わりも触れて欲しかった。
しかし、資料編の充実ぶりは尋常ではなく、
この部分だけで興味が有る人は購入の価値が有る。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:9
全シングルに関する本人談話と、資料編の充実ぶり。

面白さ:6
コメント内容がシングル中心だけという狭さ。

必携度:4
歌謡曲ファンなら。

入手難度:4
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