世界の子供たちに夢を書 題:世界の子供たちに夢を
副 題:タツノコプロ創始者 天才・吉田竜夫の軌跡
著 者:但馬オサム
出版社:メディアミックス
発行年:2013/1/13
 漫画家から身を起こし、TVまんがで異彩を放っていたタツノコプロの総帥・吉田竜夫の評伝である。
 書題は、吉田竜夫が語っていた言葉からである。
 
 彼は、宇宙戦艦ヤマトで猛烈なアニメブームが来襲していた、その真っ直中で若くして死を迎えていた。
 もし、日本にこれだけアニメというものが定着し、海外にも本格的に進出できるという世に彼がいたなら。
 夢想するに切ない。

 彼が抱えていた夢の中には、タツノコランド、即ち遊園地の構想も有って、実現寸前まで行ったという。
 この辺、虫プロランドを夢見た手塚治虫と共通するものが有るし、それだけウォルト・ディズニーという人物が与えた影響は、遠い東洋の島国までも根強いものが有ったという事だと思う。

 愛娘の吉田すずかが跡を継いでいて、他でも色々と活躍しているというのも初めて知った。
 サン企画のソノシートで、子供時代の吉田三姉妹が何曲も吹き込んでいるが、どういう心境でやらせていたのだろう。

 円谷一や渡辺岳夫の時も思ったが、本当に早死にする人って、悪く言う人がいない。
 みな、 芯から惜しんでいる。
 紹介される数々の挿話が、 それを裏付ける。

 惜しむらくは、但馬オサムの博覧強記ぶりが、些かくどくなっている事。
 本筋と関係の無い事物まで掘り下げて紹介しすぎるのだ。
 勿論、それも読んでいて面白いのだが、あまり長く本筋からズレるとまどろっこしくなるので、ああいうものは脚注で別記すべきだろう。
 但し、読み物としての全体構成は素晴らしいものとなっている。


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:8
  豊富な関係証言。資料閲覧。


面白さ:8
  手塚治虫に比してあまりに知られていなかった人物像。


必携度:7
  テレビまんがを調べている人はほぼ必見。