ネオンサインと月光仮面書 題:ネオンサインと月光仮面
副 題:宣弘社・小林利雄の仕事
著 者:佐々木守
出版社:筑摩書房
発行年:2005年6月25日
 『月光仮面』『快傑ハリマオ』『隠密剣士』など、初期のテレビで子供達を湧かせた、テレビ映画の先駆けである宣弘社は、しかし、そもそも広告代理店であった。
 しかも、あの阿久悠や上村一夫、伊上勝らが働いていたというのだから、どれほど奇跡的な会社であったか。

 そんな宣弘社を仕切っていた小林利雄という人物を扱った書だが、あの、『お荷物小荷物』などで名を馳せた脚本家の佐々木守が、他人の評伝を書いている事に驚いた。
 佐々木は、宣弘社が担当していたTBS日曜19時の武田薬品提供枠で、『シルバー仮面』『アイアンキング』の脚本を請け負っていたとは言え、何故このような仕事をする気になったのだろう。
 直接的には、岩佐陽一の働きかけだったようだが。

 しかし、佐々木個人による語りの部分というのは存外に少なくて、他書からの転載や脚本の抜き書きも多い。脚本を読んでみたい人には貴重かもしれない。 
 月光仮面、豹の目、快傑ハリマオ、隠密剣士、シルバー仮面、アイアンキング、それぞれの脚本を少し読む事が出来る。

 広告屋として、かなり明確な意思と先見性を持っていた人物であったが、制作というのは水物で、ましてテレビ番組はカツカツでやっていたろうから、外れた時まで考えると、あまり割の合わない仕事だったのではないか。
 それが原因かはともかく、今や電通に吸い込まれてしまった。
 テレビが堕落したのは、代理店が電通と博報堂だけに収斂されてしまった事も大きいように思われる。
 良き時代を謳歌した一人の傑出した広告屋を偲ぶ入門書として、意味が有るかもしれない。 


★★★★★ 独自採点 ★★★★★


資料性:7
他書の引用が結構な部分を占めており、独自情報は少なめ。

面白さ:7
小林利雄という人生の面白さ。

必携度:5
広告方面の人は是非知るべき人物